PROJECT
STORY

03

脳の健康チェックサービス

超高齢社会の課題に
脳の健康から世界初のサービスに挑む

OUTLINE

2025年には、国民の4人に1人が75歳以上という超高齢社会が訪れます。認知症・認知症予備軍は高齢者の3人に1人になるとの予測もあり、人生100年時代において「認知症になっても自分らしく、将来に希望を持って生きていける社会」の実現はこの国の喫緊の課題になっています。

2020年、ドコモグループは人生100年時代のクオリティ・オブ・ライフの向上を目指し、認知症の早期発見に寄与するサービスの実証実験を開始。

2022年9月21日の世界アルツハイマーデーに、フリーダイヤルで日付と年齢を答えるだけで認知機能低下の疑いを判別できる無償版「脳の健康チェックフリーダイヤル(0120-468354)」を発表。2023年同日には、さらに詳細な認知機能をチェックできる有償版「脳の健康チェックplus(0570-012354)」をリリースしました。

PROJECT MEMBER

私たちが紹介します

  • NTTコミュニケーションズ
    第一ビジネスソリューション部 ビジネスデザイン部門

    YOKOYAMA AKIYUKI

    横山 彰之

  • NTTコミュニケーションズ
    第一ビジネスソリューション部 ビジネスデザイン部門

    SAHARA TORU

    佐原 徹

  • NTTコミュニケーションズ
    ソリューションサービス部 ICTイノベーション部門

    FUSHIKI SHUNTARO

    伏木 瞬太郎

01 社会課題と解決のアイデア

社員の介護体験から見えた超高齢社会に必要なサービス

このプロジェクトが生まれた背景には、金融機関のお客さまを担当するNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の営業自身の実体験があります。当時、ご家族が認知症の周辺症状に悩まされていたこともあり、「この状況は私だけではないはず。これからの時代、認知症という社会課題を解決することはますます重要になる」と考えたそうです。その一方で、金融機関においても2030年に認知症患者の金融資産が215兆円になるという予測があり、高齢者への対応をどうするかが大きな課題になっていました。認知機能が低下している恐れがあると利用者が意思決定を正しく行ったかどうかが曖昧になるため、金融機関は詐欺などを防止するために取引や資産を凍結せざるを得ず、たとえ家族であっても金融資産を自由に引き出すことができなくなってしまいます。こうした金融機関の課題意識と営業担当の実体験が重なって生まれたのが、「気軽に認知症の早期発見ができるサービス」というビジネスアイデアでした。認知症は根本的な治療法がない病気ではあるものの、認知症の手前の認知機能低下の段階であれば適切な治療やリハビリを行うことで回復する可能性を高めることができますし、認知機能低下を抑制し、本人の意思確認能力を維持できるようになれば金融機関による取引や資産の凍結も回避することができます。2020年、このアイデアは新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」(※)を通じて実証実験の機会が与えられ、金融機関の営業を担当する第一ビジネスソリューション部が中心となった「脳の健康チェックプロジェクト」として動き出すことになりました。

※ docomo STARTUP…ドコモグループ社員から生まれた新しいアイデアをもとに、共創パートナーと未来の新事業を創り出すプログラム。

02 ドコモの強み

フリーダイヤルを活用した世界初のサービスを開発

ビジネスアイデアの実現にあたって、私たち脳の健康チェックプロジェクトはNTT Comの代表的なサービスである「フリーダイヤル」を中核に据えることを決めました。他社のウェブサービスやアプリケーションとの差別化を意識したことも理由のひとつですが、なによりも大きかったのはメインターゲットである高齢者の方との親和性が高かったこと。認知機能低下の早期発見に対する高齢者の意識は決して高いとは言えない状況ですし、より多くの高齢者の方が「これだけ簡単ならやってみよう」と思えるようなサービスでなければ利用者の裾野を広げることはできないと考えました。私たちはパートナー企業とともに、フリーダイヤル上でAIが声のゆらぎなどの1,000種類以上の音声特徴から認知機能が低下しているかどうかを判別する仕組みを共同開発。電話口で日付と年齢を答えるだけで、1分程度で脳の健康をチェックしてくれるという世界初の試みをかたちにしていきました。しかし、この当時はまだサービスが社会に受け入れられるかどうか、ユーザーが利用してくださるのかどうかも未知数だったため、2022年9月21日の「世界アルツハイマーデー」に第一弾となる「脳の健康チェックフリーダイヤル」の無償提供を開始しました。試験的なリリースではありましたが、各種メディアに取り上げられたことをきっかけに1週間ほどで想定の10倍となる10万コールを獲得。自治体や企業からも数多くの問い合わせを受け、最終的に90以上のパートナー候補企業とサービスを活用した社会課題解決に向けたビジネス共創ディスカッションをさせていただくことになりました。

03 ドコモのDNA

ドコモの使命感が支えた2度にわたる社会検証

「脳の健康チェックフリーダイヤル」では予想以上の成果が得られたものの、その一方でパートナー企業からは「認知症になってからでは手遅れになる」、「予防のためにも、より早いタイミングで認知機能の低下がわかるようにしてほしい」などの課題も寄せられました。そこで私たちは、即時記憶やワーキングメモリに関わる設問を増やし、より詳細な「正常」、「ほぼ正常」、「軽度の低下」、「中程度の低下」、「低下」の5区分で脳の健康状況をチェックできる技術を開発。この新技術によってより早期の認知機能低下を判別できるようになりましたが、一方で「脳の健康チェックフリーダイヤル」に比べて6分ほどの所要時間がかかるようになったため、2023年のアルツハイマーデーに「脳の健康チェックplus」として二度目の社会検証を行うことを決めました。今回はナビダイヤルを利用したため全体の利用者数は減少したものの、所要時間が長くなっても離脱率が上がらなかったこと、有料でも利用希望者を獲得できたこと、そして自治体や企業の方から「plusであれば70代以前の認知症への意識が高くない方からでも興味をもってご利用いただけるかもしれない」、「既存の認知機能チェックサービスよりも気軽でかつ早期の認知機能低下がわかることが魅力的」という声をいただけたことは、ビジネス化を検討するうえでの大きな収穫になりました。このように二度にわたる社会検証に踏み切れたのは、ドコモグループ内にコンセプトに共感してくれる人が大勢いたからです。ビジネスになるかどうかわからない段階から認知症の課題解決に積極的に投資してくれる環境は非常に心強かったですし、このプロジェクトを通じてドコモグループの社会課題に対する姿勢、使命感の強さを改めて実感することができました。

04 ドコモが目指す未来

脳の健康状態のチェックが日常の光景になる社会を目指して

脳の健康チェックプロジェクトの次の目標は、法人向けサービスとして事業化することです。現在はまだ本年度末のリリースを目標に金融業界や自治体の方々と協議を進めている最中ではありますが、クライアントごとに専用の電話番号を設置し、従来の認知機能チェック機能に加え、ユーザーの判定結果の推移や利用傾向などの履歴を管理者が確認できる機能、その内容に合わせて健康イベントなどのコンテンツを紹介できる機能を提供していく予定です。2023年は認知症基本法案の成立や認知症の新薬の承認などのニュースが注目を集め、超高齢社会に対する意識はますます高まっていくはずですし、これからも「脳の健康チェック」を軸にさまざまなサービスの可能性を探っていきたいと考えています。私たちが目指しているのは、まるで体重計に乗るように誰もが気軽に認知機能のチェックができる社会です。まずは事業化を実現することが前提ではありますが、生成AIをはじめとする新たな技術要素の検証なども進めながら、すでに恒例となった世界アルツハイマーデーに合わせた社会貢献への取り組みも続けていきたいと思っています。大切なのは、ドコモグループとして認知機能低下の早期発見の重要性をメッセージし続けること。社会の意識を変え、行動を変え、認知症の予防を当たり前の光景にしていく。それが私たちのサービスが目指すべき理想の姿だと考えています。

※掲載内容は2023年12月時点のものになります

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