PROJECT
STORY

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クラウド型教育プラットフォーム

一斉休校を支えた
教育クラウドサービス

教育現場のICT化を支援する

OUTLINE

2020年2月27日、政府が一斉休校を要請しました。「これでは学習がストップしてしまう」「自宅で学習が継続する手立てがない」。教育現場に混乱が広がる中、スマートエデュケーション推進室は翌日にニュースリリースを掲載。「まなびをとめないプロジェクト」を発足し、教育クラウドサービス「まなびポケット」と、デジタル教育コンテンツを無償提供することを発表しました。それから1年が経ち、200万人のユーザを獲得するサービスになった「まなびポケット」。サービスの飛躍の裏に、どんな物語があったのか。プロジェクトメンバーが、当時を振り返ります。

PROJECT MEMBER

私たちが紹介します

  • ビジネスソリューション本部 事業推進部
    スマートエデュケーション推進室 主査

    Akimoto Junichi

    秋本 純一

  • ビジネスソリューション本部 事業推進部
    スマートエデュケーション推進室

    Takatou Mika

    高頭 実花

  • ビジネスソリューション本部 事業推進部
    スマートエデュケーション推進室 主査

    Morozumi Keiichi

    両角 恵一

ROAD MAP

  • Phase 01 事業創出

    誰もが意思と特性に応じて、自分らしく学ぶ社会を目指して「まなびポケット」というオンライン上の教育プラットフォームを開発。

  • Phase 02 急成長

    新型コロナウイルス感染症の拡大による「一斉休校」の要請が政府から出されたことをきっかけに、通常の20倍におよぶ問い合わせが殺到。

  • Phase 03 活用促進

    ICTに不慣れな教員たちからの問い合わせに対し、多様な利用方法を提示。NTT Com支店の営業部隊も動員し、端末とセットにしたパッケージプランも展開。

  • Phase 04 課題分析

    急速な利用拡大に対応すると同時に、今後を見据えた課題を冷静に分析。システムや事業としての次なる展開へ準備を進める。

  • Phase 05 サービス拡大

    学校教育で活用された実績とデータから、さらなる活用用途として企業での展開を模索。学校教育の先にある社会における人材・組織の在り方へと領域を広げていく。

Phase 01 事業創出

誰もが自分らしく学べる世界を。

サービス誕生のきっかけは、10年前にさかのぼります。当時、NTTグループでは教育ビジネス創出に対する機運が高まっており、そのミッションは文部科学省担当に着任したばかりの秋本に託されることになっていました。「文部科学省の実証実験にも挑戦しながら、事業の構想を固めていきました」と語る秋本は、2017年に“誰もが自分らしく学べる世界を”をコンセプトにした「まなびポケット」をリリースしました。めざすのは、児童生徒の意思と学習データを掛け合わせることで、一人一人が「何を、いつ、どこで、誰と、どうやって学ぶか」という自分らしい学びを見つけることができるサービス。1人の児童生徒が利用するIDを一つに統合することで、学習の進捗や児童生徒の状況、提供すべき教育コンテンツがつながり合い、一人一人にパーソナライズされた環境で学習することができ、最小単位であれば無料で利用できるため、どの学校であっても導入を積極的に検討することができます。秋本は「教育のICT(情報通信技術)化の遅れは日本の課題の一つですが、導入コストという障壁を乗り越えられる学校はあまり多くありません。このサービスによってすべての子どもたちに学習する機会を提供きればと期待していました」と語ります。

Phase 02 急成長

賛同企業とともに、無償提供を決断。

一斉休校の知らせを受け、秋本はただちに各デジタル教材を提供しているパートナー企業に連絡をとりました。「教育事業に携わって10年間、文部科学省の事業などを通じて教育業界のプロフェッショナルとの交流を深めてきました。ここで培った信頼関係の存在も大きかったと思います」と語る秋本は、賛同企業とともにまなびポケットとデジタル教材の無償提供を決断します。これまで教育の未来のために、子どもたちの未来のために尽力してきたからこその英断だったのかもしれません。「ニュースリリースを発表すると同時に大きな反響がありました。通常の20倍ほどの問い合わせがあったかと思います」という秋本の言葉に、ユーザーサポート窓口を担当する高頭が続きます。「学校関係者からはもちろんですが、なかには保護者の方、児童生徒本人からご相談されることもありましたね。通常であれば1日で1校を対応しているのですが、このときは1日に30校ほどを対応していました」。

Phase 03 活用促進

全国の学校に“ICT化”を届けるために。

メディアからの取材の申し込みが殺到する一方で、プロジェクトチームはサービスが提供できる価値の最大化にも取り組みました。「学校教育は、人対人です。まだまだICT化が進んでいるとは言えませんし、テクノロジーの活用に慣れている先生も多くはない」と話す高頭たちプロジェクトメンバーは、教員からの「プラットフォーム上で朝の会はできるか」「卒業式は、子どもたちの大切な思い出になる。なんとか開催したい」という悲痛な叫びに応えるかたちで、「この機能を使えば、朝の会のように子どもたちの心理状況を把握することができます」「オンラインでつなげて卒業式や寄せ書きを実現しましょう」と提案していきました。同時に、政府が「児童生徒1人1台に端末を配布する」という構想を前倒ししたことを受け、プロジェクトチームは約1800を数える自治体に“教育のICT化”を届けるために奔走。NTT Comの支店のスタッフ網を最大限に活用し、まなびポケットと端末をセットにしたパッケージプランの提供を実現したのです。

Phase 04 課題分析

定着化と、持続可能なモデルの確立を。

すでに、まなびポケットの登録者は200万IDを超えることが予想されています。しかし、この目標を達成してもなお、プロジェクトチームは冷静さを失いません。「まだまだ課題はたくさんあります」と頷くのはDX(※)領域リーダーの両角。「今回の一斉休校が、教育のICT化の大きなきっかけになったことは間違いありません。ですが、もともと学校現場の教員は非常に多忙で、新しいスキルや知識を覚える余裕がないことも事実です」。
業務量の課題だけでなく、教育者としては子どもたちに直接会って教えたいという気持ちもあります。コロナ禍が落ち着けば、急激に増えた登録者の離脱が加速するかもしれません。「定着化という観点から言えば、教育現場の方々と慎重に議論しながら、子どもたちにとってベストなICT化を模索していかなければと考えています」と語る両角は、今後はまなびポケットの収益拡大を見据えた施策の検討も重要だと言います。
「持続可能なビジネスモデルを確立できなければ、教育のICT化を推進していくことはできません。学習データの分析やさまざまなコンテンツが利用できるサブスクリプション化なども含めて、まなびポケットが半永久的に子どもたちを支えられるようなモデルを作りたいと考えています」。
※ DX(デジタルトランスフォーメーション)…データとデジタル技術を活用して、業務や組織、ビジネスを変革すること。

Phase 05 サービス拡大

学校から教育へ、教育から企業へ。

まなびポケットは、今後どのように展開されるのでしょうか。
「現在は学校教育に焦点を絞っていますが、今後は家庭や塾、予備校といった私教育との連携も視野に入れ、児童生徒がどこでつまづいているのかも全体で共有しながら教育を個々の目標に応じてパーソナライズ化していきたい」と語る秋本の言葉を、両角が引き継ぎます。
「現在、協働学習のなかで出てきた言葉などから感情を分析し、その児童生徒が学級のなかで孤立していないかどうかを把握できるコンテンツも提供しているのです。こうした“つながりを可視化する”というテクノロジーは企業の組織形成においても活用することができますし、最終的なステージにおいては民間企業にも貢献できるようなサービスにしていきたいですね」。
一斉休校から約1年。急速な事業成長のなかで仕事をすることは決して簡単ではなかったものの、そこで得た知見は確実に未来につながっているようです。
「スマートエデュケーション推進室は少数精鋭。その分、若手にもチャンスがたくさん回ってきますし、社員のチャレンジを応援してくれる風土もありがたい。今後も試行錯誤を繰り返しながら、教育の未来に貢献していけたらと考えています」と高頭は語ります。

※掲載内容は2021年2月時点のものになります
※十分な感染対策を行い、撮影時のみマスクを外しています

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